1月11日(土)、台湾の新竹市にある国立陽明交通大学 光復キャンパス 田家炳光電センターにおいて、昨年の10月に逝去された王興宗教授の追悼式が執り行われ、当社代表取締役会長の辻 理が出席いたしました。
王教授は、アメリカ光学学会フェローで、日本微光学学会学術賞などを受賞された台湾の著名な研究者です。王教授は、台湾初のヘリウムネオン(HeNe)レーザー、世界初の白色レーザー、そして世界初の窒化ガリウム青色面発光レーザーを開発されたことで知られており、「白色光レーザーの父」と呼ばれています。レーザーの開発とともに歩まれたその生涯は、数多くの最先端の研究成果をもたらし、世界の産業の発展に多大な貢献をされました。
本追悼式では、王教授の温かな人柄を偲び、多くのご来賓、同僚、友人、恩師の方々など約50名の参列者が集まりました。追悼式の中で、当社代表取締役会長の辻は以下の追悼メッセージを述べ、王先生を偲びました。
●辻から王先生への追悼メッセージ(抜粋)
私の親友である王興宗先生の素晴らしい人生と業績を称えます。
私が王先生に初めてお会いしたのは今から約50年前、私がNASAで働いていた頃のことです。ロッキード・マーティン パロアルト研究所に勤務されていた王先生は、優れた研究成果や特許を取得されており、これほど才能豊かで革新的な研究者との関係を築くことができたのは非常に貴重な体験でした。
王先生は、台湾で学士号を取得され、日本の東北大学で学ばれた後、アメリカのスタンフォード大学で博士号を取得されました。この多様な学歴により、独自の視点と豊富な知識を持ち、それを惜しみなく周囲の人々と共有されていました。
初対面の時から、私たちはいわゆる「友好的なライバル」となり、お互いの分野でさらなる高みを目指して努力しました。私が日本に帰国し、王先生が台湾に戻られた後も、私たちは親しい関係を保ち、アイデアを共有しながらお互いの取り組みを支え合いました。
年月を重ねる中で、その絆はさらに深まりました。サムコでは、王先生の多くの学生を京都の施設で受け入れる機会をいただきました。学生たちは私たちの装置や設備を使用して研究を進め、その姿を通じて、王先生の指導力と献身が次世代のイノベーターにどれほど大きな影響を与えたかを実感しています。王先生が私たちを信頼してくださったこと、そして30年以上にわたり協力できたことに、心から感謝いたします。
光学およびオプトエレクトロニクスの分野における王先生の貢献は、真に卓越したものでした。半導体レーザーや量子の閉じ込め構造などの最先端の研究は科学界に大きな影響を与えました。また、彼が日本の半導体分野の先駆者である伊賀健一先生(東京科学大学 栄誉教授)を深く敬愛していたことにも、私は大いに感銘を受けました。この科学的卓越性への共通の敬意が、私たちの絆をより強固にしてくれました。
王先生は単なる同僚ではなく、大きな刺激を与えてくれる存在でもありました。発見への情熱、技術を進歩させるための献身、いずれも比類のないものでした。彼の驚くべき精神が、彼と接した無数の人々の心の中で、そして彼が成し遂げた画期的な研究において、今後も生き続けることを願っています。
彼と過ごした時間を振り返ると、感謝の気持ちで満たされます。王先生の遺産は、輝き、優しさ、そして知識への揺るぎない探求心そのものです。天国でも光やレーザー技術の新たなフロンティアを探求し続けているのではないかと想像します。
王先生、あなたは大きく惜しまれる存在ですが、科学への貢献と築かれた友情は決して忘れられることはありません。どうか安らかにお眠りください、親愛なる友よ。ありがとうございました。
辻によるスピーチの様子(国立陽明交通大学 光復キャンパスにて)
王先生がサムコを訪問された時の写真(2000年)
●国立陽明交通大学について
台湾の台北市に本部を置く国立大学。2021年2月、医学系の名門である国立陽明大学と、理工系の名門である国立交通大学とが統合し、現在の「国立陽明交通大学」となる。台北、新竹、宜蘭、台南にキャンパスを有し、学生数は約18,000人。今後はデジタル技術と医療を融合した分野での人材育成などに注力していく方針を掲げている。